新着情報

お知らせ

一覧に戻る

エッセイ第30回「むかしの田舎の地方選挙」

2017年12月08日

 市議会選挙は定員いっぱいで全員、当選となりました。4年に1度とはいえ、その大変さを感じます。

 ずーっと昔、40年も前の事ですが、後輩のA君が「次の市会議員選挙に出たいのだが・・・」と私に相談がありました。彼は真面目で、気配りの行き届いた好青年でしたが、俗にいう選挙に出るようなタイプではないと思いました。しかし、自分はどうしても出たい。票はあると思う。でも、奥さんは大反対。「どうしても出るのなら離婚する。」と。私はそもそも選挙など何もわからないので、よく聞いたり、調べたりしてみようということになりました。

 懇意な人で、議員を何期も努めて、もう卒業しているという人柄の良い話好きなB氏を訪問しました。農村地帯の実に興味深い話を聞かせてもらいました。

①まず、出ようとする人の家では、奥さんか姉さんか「心(シン)」になる「おなごし」がおらんといかん。それも選挙が好きで好きでたまらん女性がおって、「まかない(手伝い)」の衆に気配りして、よくやってくれる人には、陰からそっと物を渡して機嫌とるなどの細かい気配りもせないかん。○○さんところの奥さんや見てごー。選挙になると生き生きして、あの大けな体で動きまわっとるじゃろ。あんな人が身内におらんといかんのじゃ。裏方が一丸とならんと、選挙は出来ん。

②候補者本人は、外面は大らかで、内面は油断のない作戦をして、『清濁合わせ飲む』度量がないといかん。敵方に、しげしげ通っとることがわかっている人が、時にわが方の事務所へ来てくれた時でも、待っていましたとばかりに手をとって「ありがとうございます。貴方が支援して下さっている事はとても心強い。とてもうれしい。最後まで、ぜひとも、よろしく。」と感謝の意を表さなくてはいけない。こうしていると、その人も敵のところへ、行きにくくなる雰囲気をつくってしまうわけじゃ。

③事務長が票読みをしとらい。△○◎とつけてな。700票以上なければ当選出来ないが、今回は800票以上は固いと言うとる。こうした時に候補者自身は、自分しか知らん絶対に固い秘密の100票を誰にも明かさず持っとんじゃ。開票後750票で当選したとする。事務長などは、自分達がここまでやったんじゃと鼻高々で喜んどるが、自分の心の内では、自分の秘密の100票がなかったら、落ちとった!!と本当は複雑な心境じゃわいなあ。しかし、それはおくび(あくび)にも出さないで、事務長の手を握り、「ありがとう。ありがとう。アンタのお陰じゃ。心から感謝します。」とお礼を言わないかんのじゃな。

④一方、敵方へ応援のために通っていた事が判っている人が、「当選祝い」に来た場合は、すぐ握手をしてお礼を言う。「貴方のお陰で当選出来ました。ありがとう。ありがとう!」と。このような芸当が出来なければ選挙に出ることは、難しいだろう——との事でした。カンバン・地バン・コバンの3バン主義と言われていた時代でしたが、B氏からはこの方面の話は一切なしでしたし、政策や主張についても、一言もなかったのも、今考えてみても不思議です。

 出馬しなかったA君もB氏も彼岸へ旅立たれました。平穏な日々を過ごしておられることでしょう。

ページ上部へ