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エッセイ第26回「真正なる登記名義の回復」―経営者はオールマイティを目指すべきである―

2017年08月05日

 1973年(昭和48年)我が社の100%子会社として、三宅石油㈱を設立。観音寺市坂本町に、間口の広い土地を取得し、念願のガソリンスタンドを新築しました。

 その時、事情があって、土地も建物も友人の名義を借りて登記したのですが、資金も運営も当然ながら、全て三宅石油のものでした。早く正常な形に戻したいと考え、竣工後間もなくA司法書士事務所へ所有権移転登記をお願いしました。「三宅さん。一番安い方法で登記してあげたぞな。」との事で、私は書類を受け取り、19万円余りを支払って帰宅したのですが、何か引っかかるものがありました。それは、7階建ての新商工会議所で、1年くらい前に聞いた講演を思い出したからです。

 帰社後、一緒に講演会場へ行った我が社の経理課長に聞いてみましたが、講演内容は覚えていないとの事でした。確か、以前に高松法務局訟務部の課長で退職された方の講演で、『商工業者の法律上の常識20題の解説』であったと思いながら、その折に頂いた小冊子を取り出しました。

 20問の中の1つに、今回と同じようなケースが解説されていたのです。「甲は新築しようとして、友人乙と共に住宅金融公庫の融資の申込みをしたところ、甲は抽選に外れて乙が当たった。そこで甲が建築した住宅を乙名義で登記し、公庫より融資を受けて、毎月乙名義で支払いをして来たが、将来を考えて、所有権を、甲の名義に移転したいと考えている。どうしたらよいか。」との質問で、○イ売買か贈与で所有権を移転する。○ロ登記の錯誤を原因として甲名義に変更する。○ハ真正なる登記名義の回復として、所有権を移転登記する。この3回答の中で、正しいのは○ハであるとしています。そして、この申請には、登録免許税は売買の半分しか、かからず、かつ税金もかからないという利便があると書かれているのです。

 私は、念のために講師であった澁谷誠夫氏を電話帳で探し、その事を聞いてみました。大正生まれの氏は矍鑠(かくしゃく)として声に張りがありました。「そのとおり。パンフレットに書いてある通りです。貴方は何をボヤボヤ聞いていたのですか!」とお叱りを受けてしまいました。

 そこで私は早速に、A司法書士事務所を再訪問し、「登記は売買ではなく、“真正なる登記名義の回復”にするべきではないでしょうか」と問いただしました。「そんな事はない。わしは永年専業でやって来たが、こういう場合は、みんな、このやり方(売買)でやって来とるがな!」と自信と誇りに満ちた態度でした。「それでも、私が聞いた講演では『真正なる…』が正しいと言われました。」と、パンフレットを開けてお見せしました。彼は読み終わって「ウーン」と一声発して、「このパンフレットを4~5日貸してくれるな。次の金曜日に、東京で(司法書士の)全国大会がある。そこで聞いてみるきに」と言われました。

 私は言いたいことがいっぱいありました。19万円余が半分以下で済む事になりますが、これまで色々お世話になっているA氏に対して言いづらく、既に支払済の19万円余については黙っていました。先方も何も言わずに、この件は間違いの差額は返済されず、登記の方法についてのやりとりだけで、事実上終結しました。これまで、私を含めて、この地域の人々や企業に対して、どれだけ多くの不必要な出費をさせて来たことか!と心の中で思いました。それを言い出すと、多くの影響があり、大変なことに発展するかもと思いました。

 専門家に丸投げしてよいのだろうか。専門家にも盲点があるのかもしれない。私達は経営者として、主体者として、企業防衛のためには、多角的によく学び、学んだことを実践して行かねば学ぶ意味がなくなってしまう。————と、つくづく教えられたことでした。昭和48年頃の事ですが生涯忘れられないことの一つです。

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