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エッセイ第22回「方言の風合(ふうあい) その2」

2017年03月06日

 私は若い頃、家業の石炭屋をやっていたので、伊吹島へいり場用の石炭を買ってもらいによく行ったものだ。伊吹の人達は海の漁師とその家族がほとんどなので、言葉使いは荒っぽい。「ワリヤ、何ションキヤー」「ゴヘダ(石炭)3t位、送っといてくれんキヤー」といった具合だが、時に高貴な言葉を聞く時がある。「これを、お前さんに進(しん)ぜる」など公家さんの言葉ではないかとさえ思えるものが使われたりした。言葉の一つひとつには、どれも人々の歴史や環境や生活のにおいがついて説得力がある。芦原すなおさんの『青春デンデケデケデケ』でも方言がふんだんに使われている。読んでいて楽しい。読者は、方言だからこその風合いを感じることが出来る。語源をたしかめると、思わぬ史実に出合ったりする。

 瀬戸大橋が開通した直後に、坂出側の陸地にくっついた沙弥島の資料館で方言集を見ていたら、『ハチハン』が出てきた。     かつての瀬戸内海は、村上水軍が取り仕切っていて、8ヶ所の関所があった。この8ヶの印をもらっておくと、向い地(中国地方)へ行くのも何のお咎めもなく通行することが出来たことから言われた言葉のようである。ハチハン(正々堂々としたさまを云う)は〔お祭りの日は昼間からハチハンで酒が呑める〕などと使われている。瀬戸内海沿岸ではかなり広域に使われているようだ。

 実に沢山ある西讃地方の、現代の若者には余り使われていない方言の代表的なものを少し記してみよう。
・エブロコブロ(不規則な凸凹のこと)
・サンジラコ(部屋など、いっぱいに散らかっているさま)
・ヒヤツケナ(変な)
・スコケル(ずっこける)
・ゲンシヤ(お金持ち) 
・アズル(苦労する)
・コバンゲ(夕暮れ時)
・ヒカランパチ(全く水分がなくなっているさま)
・ビンドロ(ガラス)
・ナンシニ(いいえ、どうして)
・マルタデ(全部で)
・モドク(ほどく)
・エライ(しんどい)
・トツケモナイ(とんでもない) 
・ホンダキンド(そうだけれど)
・チョットコバ(ほんの少し)
・ダスクタイ(だらしがない、しまりがない)
・ツロクシトル(似通っている)
・チビット(少し) 
・マドウ(弁償する) 
・アズナイ(幼い) 
・カマンガイ(かまわない、平気)
・オドロイタ(目を覚した)
・ホタエル(ふざける) 
・マタイ(弱い)
・アンダイナ(不安な)
・メンメラ(自分たち)
・アゲト(顎) 
・ヘラコイ(ずるい)
・コベラコイ(ちょっと、ずるい)
・アンニヤン(兄さん)
・サッチ(強いて)
・コスイ(ずるい)
・イカメナ(うらやましい)
・ジルイ(ぬかるんでいる)
・ダンナイ(大事ない)
・チョッキリ(丁度)
・テンデニ(各々)
・テダル(連になる)
・サラ(新品)
【水が】マケル(あふれる)
・ブル(漏れる)
・ヨボウ(伝って流れる)

 など書き連ねていくと、方言でなければ言い表せない程、方言には絶妙の風合がある。
ほんだきん(だから)地域を愛すると共に、生まれ育ったこの地の方言にもっと光を当てたいものと考えている。

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